なおきちの脱サラ学生パパ日記

脱サラ&大学編入の直後に長男が誕生&妻が新居購入。遅咲きの教育学研究者を目指す筆者(3x歳)の日々のバタバタと、妻すえきち・長男ともきちの観察記録です。

7/2(木)科学者のクセ

しばらく学業の中身から外れていたので、この日にゼミで発表した内容を書いてみようと思います。
いろいろ思うこともあったし。
 
発表で取り上げたのは、研究者(特に科学者)の研究スタイルについての心理学の論文です。
スペシャリスト型とジェネラリスト型の分かれ方の話。
 

 

科学者に何が求められているか

このあたりは論文には書いてない内容ですが、簡単な導入ということで。
 
古代から近代にかけては、なんでもできる学者がたくさんいました。
数学、哲学、物理学、文学などなどいろんな分野で業績をあげてるとか。
多才性こそが有能の証、と考える批評家もたくさん。
でも、科学の発展にともなって各分野の知識が膨大になってきたので、科学者の研究もそれぞれの分野に特化した深いものにならざるを得ませんでした。
 
最近はちょっと話が違ってきていて、地球規模・世界規模で起こっている問題の解決には1つの分野の知見ではどうにもならなくなってきました。
そこで、いろんな学会や大学では、学際的な(いろんな分野をまたがる)研究を強く奨励するようになっています。
たぶん国から出ている助成金も増えているのでは。
 

実際のところ

ところが、こういう情勢にもかかわらず、自分の専門分野の狭く深い研究を志向する研究者はかなり多いのです。
それは、浅く広くの研究はコストが高く、結果がでないリスクが高く、キャリア形成の面でも弱く…といった面があるから。
でもその一方、浅く広くの研究を好む研究者もある程度います。これだけ条件が悪いのに、それはなぜなのか。
論文の著者の推測では、そこには研究者のパーソナリティが大きく関係しているのでは、ということなのです。
 
調査は、アメリカの糖尿病研究者の論文データベースとアンケートをもとに行われました。
深い研究と広い研究のどちらにどんな印象を持っているか。
そして、自分のパーソナリティや志向性について。
分析は複雑な統計やらネットワーク理論やらめんどくさいのをいろいろ使っているので、ここでは省きます。
 

2パターン

研究者のパーソナリティは、こんな2パターンの間で評価されます。
「どちらかといえばこっちに当てはまる」ということじゃなくて、その両極の間のどこかに位置する、っていう感じです。
心理学の結果ってこういうところでよく誤解される。
 
深い研究を志向するのは、こんな人。
・慎重、達成、良心、秩序重視
・成果重視、自信のある分野が好き、リスクきらい
・低コスト、確実な競争力重視
 
広い研究を志向するのは、こんな人。
・空想、アイデア、価値、審美性重視
・学習重視、知らない分野が好き、リスク気にしない
・挑戦、革新、探索重視

研究の意義

この論文で述べられているのは、科学の発展や社会問題の解決にどちらが役に立つか、どちらが重要か、ということではありません。
間違いなくどっちも大事で、相互に依存してて、どっちもないと科学も問題解決も進まない。
ただ、研究者が自分の研究のアプローチを決めるときに、自分のパーソナリティにしたがって無意識的に決めてしまうのではなくて、この論文の研究結果を知ることで、建設的・戦略的な議論に役立ててほしい、ということなのです。
 
チームで研究するときに、全体としてはこういう方向に持って行きたいけど、この人はこういう志向があるからこのへんを任せてみようとか。
こういう方向性の研究をしたいけど、この分野はそういう研究が過剰気味だから、別の分野でやってみようとか。
この分野はこういうパーソナリティの人が多いから、もっと助成金を出して誘導しようとか。
 

まとめ

この研究は科学者を対象にしたものですが、スペシャリスト型とジェネラリスト型ってのはどんな仕事をするにしてもついてまわる話。
あと、一緒に勉強してる3回生はこれから初めての論文を書こうとしてる時期。
そんなこともあって、何かいい示唆になれば、というおせっかい根性でこの論文をゼミで紹介してみたのです。
 

で、自分は?

やっぱり自分のパーソナリティも気になるところ。
僕はかなり「広い研究志向」の人になりました。
「なりました」っていうのは、子どもの頃は「一つのことに熱中したらずっとそればっかり」の性格だと思っていたからです。
でも、今から思えば、ある程度の期間夢中になった後は、コロッと他のことに目が行くのでした。
物理学6年間、SE6年間、人材育成6年間。きれいに渡り歩いています。
音楽も、作曲6年間、アコーディオンでポップス5年間、ジャズ5年間、舞台作曲3年間。
 
そして今も、自分の現場経験に心理学と教育方法学と生涯教育学となんやかんやを混ぜて研究をしようとしてます。
授業もかなり節操無く出ているし。
広いのにニッチという不思議なところ。
地道に業績を出す、というよりも勉強して成長することにやりがいを見出す性格なんだと思います。
家族にはほんと迷惑かけます。
 
今回の論文発表では、自分がマイノリティ気味だということがわかってちょっとうれしかったし、同時にそういう研究者も世の中には必要だという感覚がしっかりできたのが収穫でした。
いまできることは、とにかくいろんな分野で、いましかできない経験をたくさんすること。
それから、それをしっかり消化すること。
すぐに成果に結びつかなくても、そのうちふっとアイデアになって降りてくる。
そんなタイプの人間だと思うのです。
 
他の人とちょっと違う勉強方法をとることもあると思うけど、3x年も生きてきて身につけた自分なりの勉強法。
人と違うことが競争力。
そう思ってがんばることにします。
 
あ、あと、この日の発表の前に、前の週のサプライズのお礼がてら、ともきちの写真をみんなに見てもらいました。
やっぱり似てるみたい。
 
今日の引用文献:
Bateman, T. S., & Hess, A. M. (2015). Different personal propensities among scientists relate to deeper vs. broader knowledge contributions. Proceedings of the National Academy of Sciences112(12), 3653-3658.